時々教えていただくこともある、全日本を代表し世界でも有数のカットマンの一人、石垣優香さんの世界選手権展望コメント記事が19日にありましたので、ご紹介します。
カットの名手・石垣優香選手に、注目する世界のカットマンを聞いた【スポーツナビ】
多様なタイプが存在する卓球。そのなかでも、打ち込まれるボールをひたすら拾う「カットマン」は絶対数こそ少ないながらも、ひと際目を引く存在だ。21日に開幕する世界選手権個人戦(ハンガリー)でも世界屈指のカットマンたちが粘りの戦いを見せてくれることだろう。
では世界にはどのようなカットマンがいて、どのような思考でプレーしているのだろうか。2014年世界選手権団体戦・銀メダリストでカットマンの石垣優香選手(日本生命)に話を聞いた。
――とにかくボールを拾って粘ることで、相手のミスを誘うのがカットマンの強みかと思いますが、長くラリーが続くときは、どんなことを考えていますか?
とにかく相手より拾うことです。相手の台に入れて、その中で変化をつけられたらつけて、チャンスをどうにかして作るという感じですね。隙を見ながら相手を動かして攻撃するか、「絶対ミスしないぞ」という気持ちでひたすら粘ります。
――どんなタイプを得意、不得意としていますか?
比較的、欧州に多い「無理に打ってくるタイプ」はやりやすいです。(回転が)分からなくても力でどんどんきてくれると変化に引っ掛かりやすいですし、チャンスも作りやすいので。苦手なタイプは2つありまして、ひとつは石川佳純選手(全農)みたいに(力任せではなく)ガンガン打ってくる選手。もうひとつはツッツキで粘られるパターンです。
こちらが変化をつけても、ガンガン打ってくるタイプだと(カットマンの強みである)変化をつけにくいです。なので、こちらもなんとかしようと無理に打って、ミスにつながってしまいます。
――相手もカットマンの場合はいかがですか?
私は苦手でしたが、攻撃力があるカットマンの選手は(相手がカットマンでも)そんなに嫌ではないと思います。
世界を代表するカットマンのキム・ソンイ(左)と徐孝元。二人は昨年の世界卓球団体戦途中に急遽結成された「コリア」でチームメートとなった【写真:ロイター/アフロ】
――世界のカットマンで注目の選手を教えてください。
やはり、キム・ソンイ選手(北朝鮮)はすごいなと思います。もちろんカットの質や変化、打つコースもいいですし、攻撃力がある選手です。動きがとても速いですし、カットも守備範囲が広い……総合力がすごく高いですね。
韓国の徐孝元選手は、サーブが良く、守備範囲も広いです。しかし、長年活躍しているので、研究されて慣れられている部分もあるかなと思います。サーブは見ていても分からないですね。真似しようとしたことはあるのですが、私にはできなかったです(笑)。サーブの切り方が独特で、とても難しいです。同じフォームで、変化のつけ方が分かりにくい。「下(回転)だろうな」と予想しても、逆の回転だったりとか……(読むのが)難しいです。
世界卓球に出場する佐藤瞳(左)と橋本帆乃香。日本が誇るカットマンペアの躍進なるか【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
――日本のカットマンについて教えてください。
世界選手権にも出場する佐藤瞳選手(ミキハウス)は、守備範囲がすごく広く、まさに“ザ・カットマン”です。相手をじわじわ崩していって、勝負所で攻撃ができます。相手が嫌になってしまうような選手ですね。
同じく代表の橋本帆乃香選手(ミキハウス)は、変化の多い選手です。もちろん守備範囲も広いのですが、どちらかと言うとサーブや、ツッツキの変化を駆使し、バックハンドもとても上手で、その得点率はかなり高いはずです。そのバックハンドを打てるパターンにカットや変化で持っていき、かなり難しいボールでも正確に入れられる技術を持っています。
――Tリーグの日本生命レッドエルフでチームメートの平野美宇選手、早田ひな選手も世界選手権に出場します。近くで見ていて彼女たちの強みはどんなところにあると思いますか?
平野選手は、超高速ラリーが持ち味。その速さが彼女の大きな強みだと思います。早田選手は日本人離れしているダイナミックなプレーが魅力的です。最近はサーブ、レシーブの技術がすごく向上しているので、そこが見どころだと思います。二人とも私が(過去に)試合したときよりも、ボールの質、パワー、速さなど、すべてが上がっています。そんなに早く強くなるんだと驚いています。
――まもなく世界選手権が開幕します。見どころを教えてください。
世界選手権は他の大会と緊張感が違います。今回は2020年の東京五輪につながる大きい大会ですし、全世界の選手がそのことを考えて出場してくるはずです。世界ランキングのポイントも大きいので、白熱とした試合になると思います。(※)
――石垣選手の今後についてお聞かせください。
今は指導を中心にやらせていただいています。しっかりと指導の勉強をして、将来五輪に出る選手を育てたいという思いがありますね。
※日本の場合、2020年1月の世界ランキングで上位男女各2名が、シングルスの東京五輪代表候補選手に選出される。世界選手権優勝で与えられるポイントは3000点で、ワールドツアー優勝の1800点と比べ、大きなポイントが得られる。
プロフィール
石垣優香(いしがき・ゆか)
1989年、愛知県出身。秀光中等教育学校から淑徳大に進学。2008年、10年とITTFプロツアーグランドファイナルU21女子シングルスを2回制した。14年の世界卓球選手権団体戦で銀メダルを獲得。現在はTリーグの日本生命レッドエルフでコーチ兼主将として活躍している。
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